powered by SEOチェキ!

Feret+UNI search

twinavi

IC

アップルのイノベーションストーリー

 私自身がリアルタイムで体験しウォッチしていたアップルのイノベーションストーリーを整理しました。

 

 「世界を変えるにはどうすればいいのか」

 

 この課題は、私がベンチャーキャピタルから、モバイルコンテンツ、オンラインゲーム事業、電子マネー事業の経営に取り組んでいた時に常に意識していたことです。

 

 最近は、アップルといっても、iphoneしか知らないひとや、インターネットの前のコンピュータが起こした革命的なイノベーションの時代背景や流れをまったく知らない人たちが、増えています。

 

 ビジネスや経営を考える上での30年間以上に及ぶ歴史的なケーススタディとして、この時代感覚はシェアしたいと思います。

「パーソナルコンピュータ」をつくった企業の歴史


沿革

 

1977年 米アップルコンピュータ社を設立

    世界ではじめて、個人向けコンピュータ Apple Iを開発

1980年 CEOスティーブ・ジョブズ氏は株式公開で2億ドルの資産家に、

    20代で米経済誌フォーブス長者番付にランクイン

1981年 アップル役員会はジョブズを解任(当時30歳)、その後アップルは業績低迷

1997年 暫定CEOとして復活、"Think Different."イメージ転換戦略

1999年 Apple Store(アップルストア)開設し、流通改革(日本では2005年)

2001年 音楽プレイヤーiPod発売

2003年 音楽ダウンロード販売サービスiTunes Storeをスタート

2008年 iphone 3Gでモバイルコンピューティングに革命を起こす

2011年8月 アップルの時価総額が全米トップに。まもなく健康上の理由でCEOを引退

2011年10月 創業者ステーブ・ジョブズ 逝去

 

 

ジョブズ伝説

高木利弘 三五館 2011-11-18
売り上げランキング : 357105
by ヨメレバ
アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝

スティーブ・ウォズニアック ダイヤモンド社 2008-11-29
売り上げランキング : 100914
by ヨメレバ
スティーブ・ジョブズ I

ウォルター・アイザックソン 講談社 2011-10-25
売り上げランキング : 1630
by ヨメレバ
スティーブ・ジョブズ II

ウォルター・アイザックソン 講談社 2011-11-02
売り上げランキング : 3486
by ヨメレバ
人々の日常生活の価値を向上する
 

 米国カルフォルニアのシリコンバレーに生まれたアップルは、大型コンピュータが大企業の情報システムとして利用されていた30年以上前の状況を大きく変えた。

 

 アップルは、1980年代に個人が買える「人々の日常生活の価値を向上するためのパーソナルコンピュータ」の世界観を提唱しApple Iで実現した。これに対し、既存勢力である大企業は、当初、マニア向けの自作コンピュータの存在をリサーチし市場価値がないと過小評価した。

 しかし、アップルは、操作感(ユーザビリティ)やソフトウエアデザイン、基本ソフトウエア、キーボードやマウスなど、実際に使う個人の視点で独自に改良に改良を重ね、新しい世界観を実現していく。そして、数年後のMacintosh(現在のmacにつながる)によって、デスクトップパブリッシング革命やコンピュータをつかったグラフィックデザインなどの産業界にまでデジタル変革を起こした。

コンピュータの新しい世界観

コンピュータの新しい世界観

 

 1990年以降の情報通信革命で、コンピュータの用途はコミュニケーション分野に拡大し、個人向け市場は飛躍的成長を遂げ、大企業の本格参入が始まった。

 

 さらに1995年頃のインターネット革命によって、メールやウェブなど「世界中の人々が個人と個人で直接つながる全く新しい世界」が生まれた。(当時、ソフトウエア卸売業と出版業でIPOを果たしたソフトバンクの孫正義氏が「デジタル革命」を日本で唱えたのはこの頃である。)

 

 そして、2000年頃には、個人が使うコンピュータは、電話やテレビと同様にデジタル家電として一般に普及し支持された。

 

 ビジネス向け市場にも拡大していったが、「人間の可能性を拡張するためのツールを生み出す発想」は、アップルのブレない信念として大切にされ維持されていった。

 

 「使いやすさ」「美しいデザイン」「シンプル」「わかりやすさ」など、あくまで普通の個人が快適に使えることを重視する設計思想を貫いた。これは、創業者スティーブジョブスのこだわりとしてその後も引き継がれた。

NeXT

イノベーションのジレンマ

イノベーションに対する拒絶反応

 

 設立後の初期の製品で大成功を収めたジョブス氏は、取締役会長を解任され追放されるまで、たったの4年間しか、アップルには在籍していない。

 しかも、macを生み出した開発チームを率いたのは数年。これを生み出す経緯の中で、解任に追い込まれたといっても過言ではない。

 

 企業の創業者が、上場直後に会社から追い出された。

 これは、明らかに、成功を収めた組織が安定志向や常識的な経営を志向することが下忍のイノベーションに対する拒絶反応である

 

ポイント:ジョブス氏の情熱は、組織拒絶され追い出された。

 

NeXTのすべて (光栄モノリスブック)

吉田 広行,高原 利之 光栄 1992-11
売り上げランキング : 1355842
by ヨメレバ

迷走

 

 しかし残念なことに、ビジネス市場が拡大したことは、業績拡大にはプラスに働いた一方で、大企業との正面での競争にさらされ続け、結果的には戦略の方向性を見誤ることになった。

 

 アップルは技術革新をイノベーティブな発想で新製品として具現化し続けたものの、創業者ジョブズ氏が理想としていたコンピューティングの世界観はアップルを追い出されたことで実現出来なかった。

 

  • ジョブス氏のインタビュー

 その理由の主なものは以下である。

 

  • 組織が、唯一イノベーションを理解していた創業者を、独善的だとして追放したこと
  • 拡大していたビジネスコンピュータ市場を軸足にしたこと
  • 大企業の集団と正面から競争に挑んでしまったこと
  • 成功した組織が、業界の常識で考え、イノベーションに対する抵抗勢力にかわってしまったこと
  • マイクロソフトの勢力争いの戦略で負けたこと

 

 この時代のアップル社内の目的は、「巨大なビジネス市場でいかに生き残るか」という消極的な発想にあった。新しい世界を切り拓く積極的なものだったとは言いがたかった。

 

 初期のファン層とブランドイメージに甘えつつ、一般人へのコモディティ市場の消費者を説得することに翻弄された。

 

 結果的に、競合品と同列に扱われ、機能とコスト、品質という単なる工業製品の土俵での競争に負けた。コンピュータの主戦場をビジネスぽンピュータととらえた当時のCEOはマイクロソフトと正面からぶつかり、1990年代後半には経営危機に陥いった。



ポイント:創業者不在の時代。

 

製造業は苦難の時代

 

 

  1997年以降、世界的な経済環境悪化やデフレ経済にあって、日本のコンシューマーのデジタル家電産業の大手ブランド企業は、深刻な経営状態に陥り迷走を続けた。

 かつての、日本ブランドの価格や品質が国際競争において通用しなくなってきた。

 主要な市場である欧米に軸足を置いていた日本企業に対して、安価な製品で発展途上国に市場を伸ばした韓国企業の躍進の影響も大きい。

 

 「モノ余り」が叫ばれ、日本の消費者が感じている無駄な機能が満載のてんこ盛りの製品は経済水準の低い新興国では評価されない

 

 どういうペルソナ(利用シーンに基づく購買層イメージ)のための製品なのかも曖昧になり、人々の生活に新しい価値を生み出せない。

 

 スティーブジョブズが1980年代からリスペクトしていたあのソニーでさえ、ヒト・モノ・カネという潤沢な経営資源にもかかわらず、迷走を続けた。

 

 

ポイント:ヒト・モノ・カネという経営資源は、

     イノベーションの十分条件ではない

 

 

スティーブ・ジョブズの王国 ― アップルはいかにして世界を変えたか?

マイケル・モーリッツ プレジデント社 2010-11-12
売り上げランキング : 273032
by ヨメレバ

スティーブ・ジョブズがCEOに復帰

プロデューサーの帰還


 「プロデューサー不在の企業組織は、何も新しい価値を産み出せない」というのが、私の体験的持論である。古典的な経営リソースの有無に関わらずである。

 企業は、明確なターゲット層の利用シーンに対して新しい価値をうまく演出して投げかけることが、現代のマーケティングには必要だ。

 
 そして、1997年、倒産の危機に瀕した同社に暫定CEOとして復帰する。

そして、「プロデューサー」としての役割を最大限発揮した。

 まず、周りの批判を退け、巨額の広告宣伝費を投じて実施したのが、"Think different."のテレビ広告CMであった。

  •  Think Different.動画

 

 2000年代には、ジョブズ氏はアップルを復活させただけにとどまらず、全米一の時価総額の超優良企業へと変貌させた。

 

 2000年、日本発のインターネット機能がついた携帯電話が、(NTTdocomoを筆頭に)世界をモバイルインターネットブームに巻き込んだ。

 

 一方で、ジョブズ氏は、音楽プレイヤーipodのリリースに着手した。当時は、大型でバッテリーの消費が激しく一部のファン層だけの人気化で終わるかに見えた。

 

 しかし、コンテンツ利用して楽しむファンの生活スタイルに着目することでインターネット配信の可能性を比較的に拡大させることにつながった。

 

 ポイント:「個人が使うコンピュータ」の概念は一気に拡大した。

 

 これは、PCの違法コピーのファイル共有、mp3プレーヤーの普及という前段階のエピソードを踏まえたアップル独自の市場に対する回答であることは間違いない。

 

 そして、2007年6月、世界的な携帯電話市場の成長に陰りが見え始めたタイミングで、音楽プレイヤーipodを、ほぼそのままの外観デザインで携帯電話のiphoneに進化させた。

 これにより、携帯電話の世界に、新しいコンピューティングの可能性を切り拓いた。

 

 ここで驚くべきは、アップルはいわゆる携帯電話のカタチ(ガラケーとも言われる)には一切影響を受けず、またしてもアップル独自の回答を提示したことである。

 同じカテゴリーではあるが、まったく異なるモノづくりを実現させた。

 

 

ポイント:それは、世界の人々の反応からハッキリとわかる。

 

 

 

アップルだけがなぜ売れる!? iPhone,iPadだけじゃない。 (超☆サプライズ)

竹内 薫,神尾 寿 ヒカルランド 2010-11-24
売り上げランキング : 269268
by ヨメレバ

プロデューサー発想のチーム

ブレないデザイン思想

 

 ジョブス氏は、「極めて人間的な、直感で理解できる快適なデジタルデバイスの価値」を追求する。

 

 それは、人々の生活シーンでの利用スタイルのイマジネーションを呼び覚ますものでなければならない。

 

 ジョブス氏の個人的センスで「決断する」といっても過言ではないだろう。しかしそのアイデアを「実現する」、開発チームのトップのこだわりと情熱にも、驚くべきものがある。

 

ポイント:考えるのではなく、感じてください。

 

  • アップル デザイン責任者の映像を是非見てください。


 もしも、組織という無機質な集団の力だけで、イノベーションが実現できない。韓国メーカーや日本メーカーにも、同様の革命を起こせなかった。

 

ポイント:なぜ、同じ結果にならないのか?

 

  ジョブズ氏の産み出すプロダクトには、禅の価値観であるミニマリズムが徹底している。

 落とし所がブレない。限りなくシンプルな機能を慎重にセレクトしたパッケージングを目指す

 

 狙いとするところ(目標)の本質的な価値を意識していなければ、何を排除して何を残すのかという決断はできないからである。

 

ポイント:それはユーザーであるファン伝わる。

 

  • 初代MAC(マウスでコマンド操作をなくした、しかもクリックボタンは一つ)
  • ipod(親指だけで操作する、ワンカラー、ワンデザイン)
  • iphone(キーボード、ボタンを排除、ソフトウエアとタッチパネルだけ、マイク無し)

 

スティーブ・ジョブズの映画のセリフ

「開ける扉を間違えると、大変なことになる」

 

 そのこだわりは徹底しており妥協がない。あらゆる反対者を排除する。(それが災いして、10年間会社を追放されてしまった)

 

 

モノづくりは目的ではなく手段

利用シーンを実現する組み合わせ


 同社は、ハードウエア製品に加えて、itunesという音楽配信ネットワークサービスのためのソフトウエアプラットフォームを生み出している。

 

 それは、動画、ラジオ、電子ブックの配信にも拡がり、最終的にはモバイルアプリケーションの世界に新しい独自ルールを生み出した。(携帯電話の世界を一変させた。)

 

 「個人の目的を手のひらで実現する」という発想は、新しい方向性である。ソフトウエアは、サイズ、機能、価格、デザインなどあらゆる面で、まったく新しいフレームワークに基づいて注意深くデザインされている。

 

 この発想は、面白いことに、2000年頃までは独壇場であったパッケージソフトウエア産業のパラダイムシフトにつながっていった。

 

  • 音楽を楽しむという「個人のライフスタイルを演出する」目的に対するモノを提供した。しかも、ソフトウエアで。
  • ソフトウエアは、商品であり有料であるという常識を壊した。
  • コンテンツを販売する新しい常識をPCに拡大。
    (携帯の着メロ・ゲームの世界から学んだ)
  • ソフトウエア自体を、マーケットプレイスにした。

 

 ここにも、イノベーションが生まれている。

 

 しかし、この新しいソフトウエアビジネスのプラットフォームで台頭してきたのは、既存の大手パッケージソフトウエア企業ではない。

 草の根の新興企業やフリーランスのクリエーターやプログラマーたちである。

 

 常識を変えられない大企業組織のジレンマが見えてくるのは面白い。

 

 iPhoneは、イノベーターであるスティーブ・ジョブズ氏がこの世を去ったあとでも、熱狂的なファンを生み出し続けている。

 

 ポイント:世界の人々のコンピューティングのスタイルを変えた。

あとがき...イノベーション・メソッド

 

 スティーブ・ジョブズ氏の復帰後の活躍は、たった10年間余りの期間をもって伝説となってしまった。

 

 それでも、彼が世界にもたらしたイノベーションの数々は歴史的な事実であり、いまでも現実である。

 

 新しい価値を生み出すメソッドは、技術革新や改善や品質管理という経営手法の枠組みを超えなければならない。

  •  明確な目標ビジョンに向かって、それらを包括的に活かすこと
  • 人間中心の視点から技術革新を活かすこと
  • コンピュータが人々にもたらす「より良い生活」
  • そのための考え方や実現のための手段であること

 

 形式的な事業計画や業績達成よりも、もっと重要なことを目標に掲げ実現してきたスティーブ・ジョブズは「伝説のプロデューサー」である。

 

 コンピュータによって人間の生活を変え、世界を変えることができることを実証してくれた同氏に感謝したい。

 

 彼が実証してきたモノづくりを手段として、世界を変える考え方をつかって、多くの企業が世界を「よりよい方向に」変えることを希望する。

 

 私自身の体験を踏まえて、世界を変えるイノベーション・メソッドについて、今後も掘り下げていきたい。

 

古谷彰男

図解 アップル早わかり (1時間でわかる図解シリーズ)

大谷 和利 中経出版 2012-10-09
売り上げランキング : 324867
by ヨメレバ
アップル〈上〉―世界を変えた天才たちの20年

ジム カールトン 早川書房 1998-09
売り上げランキング : 371843
by ヨメレバ
アップル〈下〉―世界を変えた天才たちの20年

ジム カールトン 早川書房 1998-09
売り上げランキング : 370765
by ヨメレバ